6月14日、大阪駅前第2ビル生涯学習センター研修室にて、JOIA関西支部定例会「村上譲氏還暦記念講演~食生活論・入門~」を開催しました。
■食にまつわる用語
「走り」と「名残」の違いは何ですか?そんな質問から始まった村上さんのお話。いつもグッとひきこまれてしまうその話術は健在でした。旬より早く出回るのが「走り」、旬を過ぎて残っているのが「名残」です。たとえば、「走りのマツタケに名残のハモ」といった使い方をします。なかなか通な感じがしますね。ほかにも、原料と材料、調理と食品加工、食料と食糧などの違いについて、矢継ぎ早に質問が浴びせられ、指名された参加者たちは目を白黒させて答えていました。
■食文化とは何か
質問はさらに続き、「(人は)なぜ食べるのか?」「火食の開始によって、食生活はどう安定したか?」など、興味深い質疑応答で講義はすすみました。必死で取ったメモから一部転記してご紹介しましょう。
食文化とは、「個人の食習慣が歴史を経ることにより、その国、地方、地域、村などで生まれ育ち、生活する人々によってある程度のまとまりを生じ、それが変化しながらも、そこで未来に継承されることが見込まれるもの」であり、人々が上手に食生活を営み続けるのに役立ちます。
食習慣が急激に変化すると悪い影響を及ぼす事例が二つ紹介されました。
事例①日本のある長寿村で、昭和60年、新しい道路ができ、トラックでさまざまな食品が村に運ばれて来ました。これまで粗食で健康的な食生活を送っていた村人たち、特に若者たちは、それまで口にしなかった食物を食べるようになります。やがてエネルギーを過剰摂取するにいたり、糖尿病等の生活習慣病を患うようになり、親より若い世代が次々に先に死に至る「逆さ仏」現象が起こりました。「さかさぼとけ・・・」。人間のいのちの循環まで狂わしてしまう、なんておそろしい現象でしょう。
事例②トンガの国の人々の主食はタロイモです。しかし、そこへパンが輸入されるようになり、みんなパンを食べるようになりました。パンは急激な血糖値の上昇を招きます。タロイモは同じ炭水化物でも食物繊維が豊富に含まれているので、太っても健康でいられるのです。健康には味付けしていない野菜が一番とのこと。
話はさらに、日本の食文化史に及び、500年前に西欧から油と砂糖が入ってきて、これが旨味のもととなったこと、日本食は300年前、庶民が食文化の担い手となることを通じて完成し、それまで生きる糧であった食は、文化へと発達したこと等を学びました。
■コクとは何か?
コクとは、学術的に意味が定まっておらず、村上さんご自身が研究したいテーマだそうです。味とは、五味を意味し、甘味、塩味(しょっぱい)、旨味、苦味、酸味です。辛味は痛覚であり、味には該当しないとのこと。そしてコク=残り味ではないかと村上さんは定義づけておられました。みなさんはどう考えますか?
村上さんの還暦記念講演は、みんなの心に深いコクを残し、拍手喝采で幕を閉じました。村上さん、ありがとうございました。
■村上さんを囲んで懇親会
講義のあとは、場所を変え、お待ちかねの還暦祝いをしました。村上さんにみんなから、赤いちゃんちゃんこならぬ、赤いバラの花束と扇子をプレゼント。滋賀県産野菜料理のお店の個室で、つきない会話に大阪の夜は更けていきました。今回嬉しかったことは、はるばる静岡からJOIA新理事長の作吉さんが駆けつけてくださったことでした。作吉さん、静岡名産しらすパイのおみやげ、ありがとうございました。また、JOIAを一度離れられた元会員のお二人が参加され、JOIAにカムバックしてくれたことです。
ゆるやかでもずっと続くつながりを、もっともっと広げていきたい、めざすはJOIA西日本支部だ!と盛り上がったのでした。
2014.6.14 畑節子記