JOIA関西支部7月例会報告
7月25日、太陽が照りつける中、奈良県広陵町のタビオ奈良㈱を訪問し、オーガニックコットン栽培圃場見学と勉強会を開催しました。今回は作吉JOIA理事長のはからいで、JOCA(日本オーガニックコットン協会)との共催が実現し、JOCAの方々やコットンに関心のある異業種の方もあり、15人が参加しました。
■綿花の畑を見学
タビオ㈱(本社:大阪市)は、メイドインジャパンの靴下屋さん、日本の職人の繊細な技術によるものづくりにこだわったメーカーです。国内に250店舗、海外にも50店舗を展開し、注目を集めています。靴下を製造するだけでなく、東北コットンプロジェクトを立ち上げ、3.11で塩害に苦しむ田んぼで綿花栽培をするなど、社会貢献もされています。
その子会社であるタビオ奈良㈱が奈良県広陵町にあり、オーガニックコットンを栽培しているということで、まずは圃場を見学させてもらうことに…。
圃場は広陵町広瀬というところの田園地帯の中にありました。5月末に播種した綿花は20cm~50cmほどの背丈まで伸び、小さなつぼみをたくさんつけて、風にそよいでいました。
農薬や化学肥料を使わずに栽培しており、圃場に入ると、コオロギがピョンピョンと元気に飛んでいました。それでも葉っぱはツヤツヤと美しく、また、茎がしっかりしているように思いました。まもなく花をつけ、秋にかけて背丈も1m以上に成長し、11月には収穫を迎えるそうです。
■会長さんのお話
その後、本社の会議室をお借りし、オーガニックコットン栽培の勉強会を開きました。
最初にタビオ(株)の越智直正代表取締役会長のお話がありました。コットンは塩分を多く含んだ土壌でも育つということで塩害対策として始めた東北コットンプロジェクトでしたが、コットンは気温25度を保たねばならないとされているので、最初はつめたい風の吹く東北で栽培できるのか非常に不安だったと当時を振り返っておられました。靴下屋の会長さんなのに、なぜか「素足」です。聞いてみると、工場を廻った時にさっと靴下を履いて、出来上がりをテストするために、いつも裸足なのだそうです。会長のゴーサインが出ないと製品にはならないとのこと。
「ちまたでは外国産の安い靴下があふれているが、1足あたりの原価はたった49円。安い綿糸を使っていいものができるはずがない。タビオは国内産の綿糸に徹底的にこだわった製品を作り、儲けより品質を追究している」と力説されました。
引き続き、タビオ奈良㈱の平井修司代表取締役社長も、「造って喜び、売って喜び、買って喜び」をめざしてがんばっていますとお話してくださいました。タビオは近々オープンするイオンモール新都心にも参入するそうです。
■オーガニックコットン栽培へのとりくみ
タビオ奈良(株)研究開発事業部の島田淳志さんは、ここ奈良の綿花圃場で栽培指導をされています。2009年に40aから始めた綿花栽培は、広陵町の耕作放棄地や休耕地を借り上げ、現在では5haにまで栽培面積を増やしてきました。シルバー人材センターを活用し、平均71歳の9人の作業員が島田さんの指導のもと、働いています。
播種、から収穫後の管理にいたる生産プロセスのコツを映像を交えながらわかりやすくお話してくださった中で、最も印象に残ったのは、害虫駆除についてでした。
奈良県では5月中旬から6月にかけてヨトウムシが出没し、せっかく発芽し、開いた本葉をまるごとプツッとくいちぎってしまいます。被害状況をよく観察してみると、ヨトウムシは1箇所(1穴)に1匹、一晩に1本を食いちぎるとわかりました。1穴には3粒の種子を播きます。そこで最初の被害があったときに、虫の居場所を突き止め捕獲すれば、残りの2粒から育った苗は助かるというわけです。ヨトウムシ被害が収まってから間引きをし、優良苗を1本残して育てていきます。駆除を繰り返しおこなったせいか、今年はヨトウムシの生体が減り、被害が少ないそうです。
また、アブラムシもつきますが、これは大雨が降ると消えてしまうことがわかりました。ナメクジはなかなか手ごわいのですが、これもよく観察してみると、新芽にはつくが、本葉にはつかないことがわかり、それなら新芽の時期は育苗施設でポット育苗し、本葉が出揃ってから本田に移植すればよいと気づいたということです。害虫は、ほかにも芯食い虫やコオロギがいます。綿花を雑草と共生させることで、雑草に害虫を誘導し、綿花が害虫に耐えられるまでに成長するのを待って、草刈を実施するようにしているそうです。多勢に無勢、戦っても勝てないのであり、害虫は「撃退するより共存へ」と考えを改めたと話していました。
それにしても、そのたゆまざる観察と粘り強い取り組みには脱帽し、感嘆しました。コスト削減、収量アップ等の課題を見据えながら、これからもサスティナブルをめざしてがんばっていきたいとしめくくられました。
■フリートーク
島田さんのお話のあと、参加者の質問やフリートークの時間をとりました。ここには書ききれないので、詳細は割愛しますが、品種によって様々な特徴があること、今や世界中で栽培されるコットンのは90%がGMOだということ、収穫後の残渣の活用方法、隣接からの飛散の防止方法、他地域のコットン栽培等についてなど、多岐にわたって活発な意見交換がなされました。
■おまけ
解散後、最寄駅前の居酒屋で、タビオ奈良の島田さんを囲んでJOIAメンバー恒例の飲み会をやりました。島田さんが履いていたタビオの靴下を見せてもらってビックリ! モダンな色使いとデザイン、そしてつま先とかかとの幅が普通の靴下よりずっと広く、たっぷりとってあるのです。それがよい靴下のしるしだとか。きっと履き心地も抜群なのでしょう。
今まで安い靴下を使い捨てのようにしていた暮らしを改め、タビオの靴下を愛用し、友だちにも広めて、国内産コットン栽培を応援したいな~と強く心に誓いながら帰途につきました。
タビオのみなさま、貴重な圃場見学と勉強会の機会を設けて下さり、ほんとうにありがとうございました。すてきな靴下のおみやげもうれしかったです。
この場をお借りして、JOIA一同、心より御礼申し上げます。
現地を見学し、当事者のお話を聞く…それはものづくりのストーリーを知ること、そしてストーリーあるものを身につけることがもたらす生活と心の豊かさ…JOIA関西支部では、そうしたオーガニックが結ぶご縁をこれからも大切に育てていきたいと思います。
(畑節子)